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25歳、洋治(仮)
その日洋治は仕事も休みだったので、気紛れに布団でも干そうかと窓際に向かった。
大学を出て、一人暮らしを始めてからもう三年もの間、すっかりせんべい布団の名の通り無いよりはマシ程度の布団だった。
普段なら窓から外を見ることも無いのだが、絵に描いたような青空に、洋治はすっかり惹きこまれていた次第だ。
窓際に布団を乗せて、布団叩きなど無いものだから手で叩いてみると、たちまち埃が舞い上がった。
こんな上で寝ていたのかと思うとゾッとする反面、今まで何も害は無かったのだからまぁ良いかとタバコに火を点けた。
夏も終わり、秋晴れとは言え日が当たればまだまだ暑い。
ジリジリと腕が焼けるのを感じながら、ふと前に視線をやると、向こうもちょうど窓を開けて布団を干していた所だった。
古いアパート暮らしの洋治と違い、その家は新築の一軒家で、見たところ子どももいる家族暮らしのようだ。
「いいな……」
こんな埃まみれのせんべい布団じゃ女も呼べねぇ。
そう思った洋治は、人を呼べる部屋にしなければいけないと思い立ち、買い物に向かう事にした。
六畳一間のこんな家に誰が来るかと考えれば、大学時代の友人がたまに飲みに来て騒いで帰るくらいだ。
それも男。
振り返ればいつだって女子との接点など無かった。
これからもきっとそうだろうと、男ばかりの今の会社を考えて思った。
どうすれば女性と知り合えるかを考えれば、自分のこんな生活を変える必要があった。
だから諦めた。
そうせざるを得なかったのだ。
洋治は気付いた。今更……という考えこそが間違っていたと。
新たな世界を見つけたような気分の洋治を、祝福するような青空だった。
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