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22才、綾香(仮)
智治先輩何してるんだろう?
無人のはずのビルに向かい、手を振る先輩社員の姿を見て、綾香は首を傾げた。
「ねぇねぇ綾香知ってる?」
同僚の由紀子が智治の方を見ながら、声を掛けてきた。
「知ってるって何を?」
「あのビル、もう何年も前になるけど、火災事件があって中で何人も亡くなったらしいの。復旧はさせたんだけど、そのあと入った会社の人が言うにはいつの間にか知らない社員が混じっていたり奇妙な事が絶たないんだって」
尚更、智治は誰に手を振っているというのか。
綾香が智治の視線の先を見ても誰もいなかった。
「それってさ……ユーレイってやつ?」
「そんな事言ったら向かいのビルのこっちだって危ないじゃん!」
わざとらしく咳払いをして歩く先輩女性社員、松中幸恵の無言の鎮圧により、由香子は気まずそうに去って行った。
綾香は仕方なく智治に声をかけて、ビルの真相を明かした。
何故だかそれまでさして接点も無かったというのに、突然夜の約束を取り付けようとしている。
まぁ、一回だけならいっか……。
「良いですよ、今日は空いてます」
「それなら、良い店探しておくよ!」
智治は足取りも軽く、自分のデスクに戻って行った。
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