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45歳、茂雄(仮)
せっかく仕事終わりで飲みに来たというのにだ。
カウンター席しか空いておらず、挙句に隣には若い男女という事で茂雄は1人不機嫌に呑んでいた。
上司に叱責されてその場では平謝りするものの、到底納得いく話では無かった。
工場勤務の茂雄は毎日汗だくになりながらも、無遅刻無欠勤で働いて来たのだが、どうにも態度が良くないと言う。
休日出勤を頼まれれば断りもせず出勤した。
お陰で子どもにも妻にもいい顔されず、家の中には居場所が無かった。
不味くなった酒を煽っていたが、隣の男女の話が懐かしいものであったので、つい耳を傾けた。
あるビルの火災事件の話だったが、その事件は一時期は連日報道されていた事を思い出した。
古い友人も勤めていたビルで、いきなり職を失ってしまった友人に今の職場を紹介した事もあった。
腰を痛めて辞めてしまったが、その友人は元気にしているだろうかと懐かしくなった。
「犯人、未だに捕まってないって凄くないですか⁉︎」
女が楽しげに言うと、男の方もやや赤い顔で同意していた。
どう見ても、下心剥き出しの男はそんな話はどうでもいいと言わんばかりだった。
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