罪にならない?

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罪にならない?

 昔から【花泥棒は罪にならない】ということばがある。  確かに、昔のように大きな桜の木や梅の木を手折り、風流に一枝だけ頂いてくることを想定すると【花泥棒は罪にならない】も、当てはまる気はする。  しかし、今の時代、庭がなく家の鼻先に鉢植えやプランターで育てている花を夜、軽トラックで来て積んでいくのは明らかに違う気がするのは私だけだろうか?  私の実家は洋品店で、建蔽率ぎりぎりに建物を建てたので、プランターの細いのを置くスペースしかなかった。  後は、普段使わない家用の玄関の前に、姉がお祭りで母にお土産で買ったいい匂いのする 「ニオイバンマツリ」(別名:ブルンフェルシア) 「テッセン」(クレマチスともいわれるがテッセンは品種改良版)  を置いていた。  プランターは全部がマリーゴールドで毎年秋の花が終わるとそのままプランターの上に寝かせ、種を落ちるままにしておく。そうすると翌春に新しい芽が出てくるので、そこから間引きして、また同じ大きさのマリーゴールドを咲かせる。さすがにこれは盗まれたことがない。誰でも咲かせているから。  店の入り口は段になっていて、半分が元々はめ殺しの窓で売り台を置いていた。年を取って、外に荷物を出したり片付けたりが億劫になってしまってからは、そこが花台になっていた。  毎年私が送るカーネーションの鉢が10個も並ぶ。実家の長野の佐久あたりだと、カーネーションの生育には気候が合うらしく夏は外で、冬は店の中に並べて毎年花を咲かせ続けていた。咲いてしまった花ガラはこまめにとる。全部咲ききったら、思い切って大分下の方から坊主に刈ってしまう。そうすると新しい茎が延びてまた花を咲かせるのだ。  さて、問題は【花泥棒】である。  田舎の道は静かなので家の前で車が止まれば音も聞こえる。  その日、車が止まってしばらくエンジン音がしたが、そのまま通り過ぎたので、母は夜遅くにお店を開けてほしい人が来たがあきらめて帰った。と思っていた。  翌朝、一番かわいがっていたニオイバンマツリとテッセン。後は私が送った変わった種類の緑の花が咲くカーネーションがなくなっていた。  花を綺麗に咲かせておくのには朝晩の水やりから肥料まで手をかけてあげないと綺麗には咲かない。まして、姉にお祭りで買って貰った花を二つとも盗まれてしまった。  車で来て積まないと重くて運べないくらい大きい鉢だったので、昼間見ておいてわざわざ夜に盗みに来たのだろう。  田舎ではほとんどの人が車を所有している。農家だったら軽トラも勿論持っている。  母はとてもがっかりしていた。普段お店で何があっても毅然としている人なのに。しょげてしまっていた。  これはすでに盗難事件だ。しかし、今であっても、防犯カメラなど家の周りにないほどの田舎だ。40年前では見つけるすべもない。  しかし、その花を盗んだ人は花を楽しく鑑賞できるのだろうか?  きっとその人たちの心の中には【花泥棒は罪にならない】という言葉があったと思うのだが、丹精して育てている花を丸ごと持っていくのは【窃盗】だということを考えてほしいものである。  
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