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「紅葉・・・。」
社長室の扉が閉まり切る前に紅葉を呼び、すぐに紅葉のデスクの方に駆け寄った。
紅葉は「なに?」と言った後すぐに資料に視線を下ろしてしまった。
俺の顔を見ることなく、視線を逸らしたように感じた・・・。
こんなに動揺したことは初めてだった。
いつから好きになったのか分からないくらい、紅葉はずっと俺の隣にいた。
当たり前のようにずっと隣にいて、俺のイタズラにも毎回楽しそうに笑いながらいつも付き合ってくれていた。
楽しかった・・・。
前の小学校では俺のイタズラに付き合ってくれるような奴はいなかったから。
“天の雷”なんて冗談みたいな名前になった俺と同じくらい冗談みたいな名前の紅葉・・・。
そんな紅葉がいつも当たり前のように俺の隣にいて、俺と・・・俺と・・・付き合っていて・・・。
「紅葉・・・。」
少しだけ声が震えた。
そんなダサイ声を聞かれたくなくて、これ以上話せないと思った。
だから紅葉の腕を掴み、少しだけ強引に立ち上がらせた。
紅葉は少し驚いた顔をした後に困った顔で笑った・・・。
困った顔で・・・笑った・・・。
照れたような顔で笑うことはあっても、こんな風に困った顔で俺に笑うことなんてなかった。
それに動揺した・・・。
動揺しながらも紅葉のデスクの上に紅葉を座らせ、力を入れられてしまっている紅葉の足を無理矢理にでも開きその間に身体をねじ込んだ。
紅葉は慌てた様子で、必死に両手で俺の胸を押している・・・。
俺に目も合わせずに・・・。
「あの、天野・・・っ」
何かを言われてしまうことは分かった。
それが俺の聞きたくない内容だともすぐに分かった。
だって、他の社員達から今日1日の間で何度も何度も聞いていたから。
だから・・・塞いだ・・・。
何も言えないように・・・。
俺の口で無理矢理にでも紅葉の口を塞いだ・・・。
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