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そして今日も俺は紅葉狩りをする・・・。
山ノ内社長と並ぶ紅葉を眺めて楽しむだけの紅葉狩りをする・・・。
頭がおかしくなりそうだった。
それから逃れるように会社を出て外に飛び出した・・・。
「あの時の可愛い顔は俺にしか見せないって頷いたのにな・・・。」
俺以外の奴に・・・山ノ内社長にも見せたのかと思うと苦しくて仕方がなかった。
俺のことを何て説明していたのかと想像すると悲しくて仕方がなかった。
彼氏でも何でもないのに、俺がそういうことをしてくると相談したのだと思った。
だから山ノ内社長から言われたのだと想像出来てしまった。
「子ども・・・作ろうなって、約束・・・。」
あの約束を俺はずっと楽しみにしていた。
紅葉と俺の子どもでもないアイツらがあんなに可愛くて、紅葉と俺の子どもだったらどんなに可愛いのか・・・。
9人でも10人でも11人でも欲しいと思っていた。
俺なら大切に育てられると思っていた。
紅葉の“父親”や俺の“父親”とは違う・・・。
俺は紅葉のことも子どものことも、子どもが男だろうと女だろうと・・・男になりたいだろうと女になりたいだろうと言ったとしても、家族丸ごと大切に出来る男になれると思っていた。
そう思っていたのに・・・。
泣いてしまいそうになり下を向くと、どこから流れてきたのか紅葉の葉っぱが足元に1枚だけ落ちていた・・・。
秋になり、赤い綺麗な紅葉の葉っぱだった。
少しだけしゃがみ、その紅葉の葉っぱに指先で少しだけ触れた。
俺が愛した紅葉は、きっと真っ赤になった後に全て落ちてしまったのだと思う。
あそこにいるのは山ノ内社長の紅葉・・・。
青い葉っぱのままで枯れることはない紅葉の木。
青い葉っぱの紅葉も美しかった・・・。
赤く色付く前の紅葉も美しかった・・・。
もう二度と見ることも触れることも出来ない俺の真っ赤な紅葉だった紅葉の木を眺めに、また会社へと戻る・・・。
その途中にスマホが震えた。
見てみると紅葉の“父親”の会社で働く女。
今日も情報収集のためにこの女から盗める物は盗む。
アヤメにあんなことをした男を殺すために。
紅葉の家族を捨てた男を殺すために。
殺したいと強く願う紅葉のために。
俺はどんなイタズラだってする。
イタズラをするのが大好きだったから・・・。
紅葉のためならどんな嘘だってつくし、盗みだってするし、人殺しだってする・・・。
そして、いつか・・・
いつか・・・
少しだけでもいいから、紅葉が生んだ子どもを抱っこしてみたい。
少しだけでもいいから・・・。
良かった、俺はきょうだいで。
きょうだいだから紅葉の傍にはいられる。
このままずっと・・・。
紅葉狩りでいいんだ・・・。
俺は紅葉狩りでもいいから、ずっと傍にいるんだ・・・。
そして、いつか・・・
紅葉が生んだ子どもを、少しだけでもいいから抱っこするんだ・・・。
雷side......
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