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「あの日・・・天野が会社に戻ってきた初日・・・。 私が夜に会社に帰って社長室に入ったら天野が来て・・・。」 「あの日な・・・。」 天野が怒った様子で私から視線を逸らした。 「あの時、山ノ内社長も後から戻ってきてて・・・。 見られたの・・・!! 天野は後ろを向いてたから気付いてなかったけど、私はガッツリ目が合ってたの!!」 「別にいいだろ、あの人にはゼミ教室でも見られてる。」 「学生の頃は私もそんなに気にならなかったけど、一緒に仕事をする人の前だと気まずいから・・・。 翌日は山ノ内社長との仕事で初めてミスを連発しちゃって、それで山ノ内社長が天野に言うってなったの!!」 最後は私が怒りながら言うと、天野はまた驚いた顔をしている。 「ミス?紅葉が?」 「そうだよ!!!」 「・・・紅葉が1番何事にも動じないだろ。 “社長”からも聞いてる。 あの男に捨てられて、夜中に家から出ていく時も紅葉は何も動じてなかったって。 あんな生活になったのに1人でケロリとして生活してたって。」 「それは確かに何も思わなかったけど、まだ小学校1年生だったし。 それを言うなら天野だって、ケガだらけなのにケロリとしてすぐに私の家族に馴染んでたじゃん。」 「俺はイタズラばっかりしてたからな。 イタズラの基本は何でもない顔でやるのがコツなんだよ。 でも俺だって紅葉のことになると2年くらいは仕事が手につかないくらいだったけどな・・・。」 「あんなに仕事出来たのに、あれで手につかないくらいって・・・。」 お互いにそんな会話をした後・・・無言になった。 しばらく無言になったけど、どちらも何も言えなかった。 そしたら、アヤメが・・・ 「過去を思い出すことは出来るけど、戻ることは出来ないから。」 そんなことを言った・・・。
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