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アヤメはそう言った後に小さな鞄からスマホを取り出し、天野と私の写真を撮った・・・。
「現像して後で送っておくよ。
お互いの誤解が解けた瞬間。」
そう言いながら面白そうにスマホの画面を見ている。
「過去には戻れないから進むしかないの。
でも進むなら、今が1番幸せな顔でいられる写真を選んだ方が良い。
どの写真を選んだら未来が幸せになっているかなんて、今は分からないんだから。」
アヤメからこんな言葉が出てくるなんて思わなかった・・・。
あの男を殺した後にこんな言葉が出てくるなんて、あの時は想像も出来なかった。
“アヤメ”を続け、あの男を殺すことだけを考えて生きているような子だったから。
そんなアヤメが天野と私を交互に見た。
「あの日、お母さんも死んで弟達もいなくなって、あとはあの男を殺して自分もどうやって死ぬかだけを考えていたの。
そんな時に窓から現れた。2人も現れた。
2人は私のヒーローなの。
見た目は女の子だったけど心は男だから、私もヒーローには憧れてた。
2階の窓、普通だったらあんな所から現れることなんて出来ないのに。
それなのに現れて私を救いだしてくれた。
あの男を殺すと約束してくれた。」
“アヤメ”がそう言って美しく笑った後・・・
“男の人”の顔で笑った・・・。
「ヒーローの最後、俺はハッピーエンド以外は認めねーからな。」
そんな言葉だけを残して、“アヤメ”は美しく去っていった・・・。
天野と私が救いだした裸にされていた子どもは、幸せな“今”を生きているのだと分かった・・・。
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