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美しく去っていったアヤメを天野と2人で見送った後も、しばらくその場から動けないでいた。
そしたら、天野が何でもない感じで・・・
「無事に生きて帰れたから、結婚するか。」
そう言ってくれた。
私はいつも自分からは何も出来なくて天野の言葉を待っている。
「天野は私の“雷”なの。」
「・・・名前が雷だからな。」
「そうだし、本当の“雷”なの。
天野が言う言葉は“雷鳴”のように感じる。
思わず動きを止めて耳を傾けてしまうの。」
私がそう言うと、天野は面白そうな顔で笑って私の手を握ってくれた。
「それを言うなら、紅葉は俺の“紅葉”だけどな。
常に燃えるような赤い色の紅葉が俺は好きだから、会社でもどこでも燃えさせるぞ?」
「うん、鍵はかけてね・・・。
それに、ミスはしなかったから大丈夫そう。
若かった紅葉の木が32歳になってどっしりしてきたのかも。」
天野がそれに笑い、スマホを取り出しどこかに電話を掛けた。
聞いていると“ママ”のお客様で車の送迎をしてくれる男性。
天野が迎えの断りの電話をしていた。
「こんな極上に良い女を連れてるのに車なんて乗るの勿体ねーからな!!
電車で帰るぞ、紅葉!!」
真っ赤なドレスを着ている私を、日曜日の夕方の時間の電車に乗らせるらしい・・・。
天野は悪巧みを企てるような顔で笑い、私の手を引き歩き始めた・・・。
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