247人が本棚に入れています
本棚に追加
一人暮らしの部屋まで天野が送ってくれる・・・。
さっきまで賑やかな部屋にいたので一気に静かになったのが寂しく感じた。
そのタイミングで天野が私の手を握ってくれる・・・。
それに笑いながら天野を見上げ、聞いた。
「藤岡副社長から利用されてること、いつから気付いてたの?」
「最初からだな。
たぶんあの人、わざと分かりやすくしてた。」
「・・・私は全然気付かなかった。
騙すようなことをしてって私に対してだけ謝罪してたから、天野は知ってたんだってやっと分かった。
アヤメのことは?」
「会場で見た瞬間に分かった。」
「言ってよ・・・。」
私が怒りながら言うと天野は小さく笑った。
「紅葉はそれでよかった。
俺も副社長もアヤメも知ってて、そこに紅葉まで分かってる状態だったら逆に胡散臭い雰囲気になるからな。
紅葉だけが本気でアヤメを守ろうとした姿があの場にいた全員を立ち止まらせた。」
「そうなのかな・・・。」
完全に納得は出来なかったけど、あの男を殺せた・・・。
アヤメも一緒に殺してしまったように思うけど・・・あの子はきっと死んでいない。
あの日、死んでいるような目だったあの子の目は、あの男を殺した後も生きていた。
輝くくらいに生きていた・・・。
最初のコメントを投稿しよう!