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次の日から僕は就職活動を再開した。ヒロさんからもらった意思表示バッジに名前の名前を書いて持っていき、面接の担当者に渡して事情を説明した。 一週間ほど立ってから、うれしい採用の連絡があった。僕を雇ってくれたのは近所の物流会社で、仕分けの作業をさせてもらえることになったのだ。 その企業は職場に個別スペースを用意してくれるそうで、僕がマスクなしでも仕事できるように配慮すると言ってくれた。これもヒロさんがくれたあのバッチのおかげだ。 なによりまた一人、自分の理解者が増えたことがとても嬉しかった。しばらくすると突然お腹が鳴って、僕はあることをひらめいた。 バッチのお礼と内定の報告のために、ちゃんぽんに行ってみよう。それで前にヒロさんが言っていた、新メニューのちゃんぽんを味見してやろうじゃないか。厨房で黙々と仕込みをするヒロさんの後姿が目に浮かぶ。 思わず僕が笑うと、どこからともなく聞き慣れた音たちが耳に入って来た。 がちゃがちゃ。らんらん。ばたばた。わーわー。 新型コロナがいつまで続くのか、僕には分からない。今僕がいるこの世界は、決して僕の理想ではない。それでもここで最善を尽くす価値はある。僕はそう思った。なぜならこんな僕を見守ってくれる人たちがいるからだ。 がちゃがちゃ。らんらん。ばたばた。わーわー。 がちゃがちゃ。らんらん。ばたばた。わーわー。 音は少しずつ激しくなっていく。僕は目を閉じて、暗闇に覆われたこの世界を突き破る希望の音に耳をすませる。 (了)
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