ラーメン屋「ちゃんぽん」

＃３

初めて働く飲食店は、とにかく大変だった。仕込み、接客、掃除。最小限の人数でまわしているからとにかく仕事が多くて、一つひとつの量も膨大だ。仕事が終わって家に戻ると、僕はすぐに布団に倒れ込んだ。

正直きつかったけど、僕はヒロさんや常連のお客さんのいるお店の雰囲気が好きで、なんとか頑張れた。そして仕事を始めてもうすぐ一年かという時に、世界が突然変わった。

2020年。

新型コロナの感染拡大で、あれだけ賑わっていたお店からお客さんは消えた。「ちゃんぽん」は休業を余儀なくされ、僕も自宅待機となってやるせない思いで日々を過ごした。

その後ヒロさんから再営業の連絡があって、またお店で働けることになった。しかしお店に帰った僕は、思わぬ難敵と戦うことになった。マスクだ。

僕は子どもの頃から感覚過敏なところがあって、マスクなどを肌につけるのが大の苦手だった。マスクをつけているとチクチクとした痛みが顔を刺し、仕事に集中できなかった。

そのせいで以前では考えられないような簡単なミスをしてしまって、お店に迷惑をかけることも増えた。