#7

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「まあ、結構厳しいけどな。でもお前みたいに働きたくても働けないやつもいるんだ。それに比べれば、俺の悩みなんて大したことないさ」 ヒロさんは笑いながら、髪をがしがしと搔きむしった。ヒロさんの癖は昔と変わらないままだったから、僕はとても安心した。 ヒロさんが僕のことを気遣ってくれているのが伝わってきて、なんだかこそばゆい気分だった。やっぱりヒロさんはすごいなと、僕は改めて思った。 「ああ今日な、これ持ってきたんだよ」 空気を入れ替えるようにヒロさんが鞄から取り出したのは、透明なクリアファイルだった。中には見慣れない用紙が数枚入っている。 光に透けて中身が少し見えた。その紙には「マスクをつけられません」という文言が印刷されていた。ヒロさんが口を開く。 「これ『意思表示バッジ』っていうらしい。調べたら行政が発行してたんだ。病気なんかでマスクをつけられない人のためのものなんだけど、お前の役に立てばと思ってな」 ヒロさんがバッジの入ったクリアファイルを僕の方に近づけてきて、僕はお辞儀をしながらそれを受け取った。仕事が忙しいなか、ヒロさんが僕のためにこんなことまで調べてくれていたなんて。 ヒロさんの優しさが僕の胸が入ってきて、心が満たされていくのが分かった。
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