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「ありがとうございます。ここまでしていただいて」
泣きそうになって僕が下を向いていると、ヒロさんはふうと一呼吸おいてから言った。
「男同士が面と向かってこういうこと言うの、恥ずかしいけどな。とにかくお前は一人じゃないってことを伝えときたかったんだ。だから春馬、諦めずに頑張れ」
そう言ってヒロさんが一瞬顔を曇らせたのを見て、僕はヒロさんが自分をやめさせたことの責任を、人一倍感じているのだろうと思った。でも僕はコロナを憎んでも、ヒロさんのことを憎んだことは一度だってない。ヒロさんはこれからも僕の恩人だ。
「ヒロさん、僕本当に頑張りますから。何があっても、もう絶対に諦めません」
僕は心の底から、本気でそう思って、ヒロさんにきっぱりと言った。それを聞いたヒロさんは満足そうにそうかと言ってから、少し恥ずかしそうに言葉を続けた。
「あとな。コロナ禍に負けず俺も何かやってみようと思って、最近ちゃんぽんを始めてみたんだ」
それを聞いて僕は「今さら?」と思わず吹き出してしまった。ヒロさんも笑った。
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