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面白いはなし
旦那様はちょうどその日、出版社との打ち合わせから戻られたばかりでした。
「みんな、座りなさい。面白い話を聞いてきたから」
と使用人たちを席に座らせました。
料理人はみんなにホットワインを配ります。わたくしも渋々席に着きました。
「出版社の人間の言うことにはね。なんでも日本は戦争をしていたらしいんだよ」
その話には、みなが興味を惹かれました。
「清国ですか? それともロシア?」
小作人が訊きました。
「それがなんとまあ、アメリカだって言うじゃないか」
旦那様は目を輝かせて笑いました。
「まあ、あんなに遠くの国と、戦争なんてできるわけないじゃありませんの」
わたくしが申しますと
「そうだろう? しかも負けたっていうじゃないか」
「負けた? 負けたんですか?」
料理人は驚いた口調で訊きました。
「そう、傑作なのはそのあとさ。戦争に負けたのは、八十年も昔のことだっていうじゃないか!」
「これは旦那様の冗談なのですか?」
掃除夫は訊きます。
「いやいや、ほんともほんと。ほんとの話だっていうんだからねえ」
お酒も入って、みんな大爆笑になりました。料理人なんて、笑い転げて、首がもげてしまいました。
ごん、と大きな音がして、料理人の首がテーブルの上に落ちました。ミイラのような顔をしていました。
そのあと、小作人の首も、掃除夫の首も、テーブルに落ちて、さらに床に落ち、転がっていました。
旦那様は
「これは傑作だ!」
と言って、ますます笑い転げました。
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