不貞の果てに

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旦那様は子供を下すのを諦めたようでした。というより、もう産む以外に選択肢はないほどに、わたくしのおなかは大きくなっていました。 それでも奥様は気がつきません。見えているはずなのに見えていないのか。まったく不思議でした。 ある日旦那様に呼ばれて書斎兼寝室に行ってみると、旦那様は本棚をなにか操作して、真ん中からふたつにしました。 そこに現れたのは、可愛らしい小部屋でした。ステンドグラスの丸窓があり、天蓋のついたベッドがあり、小さな揺りかごもありました。旦那様は 「ここで産みなさい。助産師はこちらで手配するから」 とおっしゃいました。 天にも昇る気持ちでした。旦那様からお許しがでたのです。わが子が愛されてすくすく育っていく未来が見えた気がしました。 出産の日は雨の日でした。窓にたたきつけ、流れ落ちるしずくを見ながら、声を出さぬよう手ぬぐいを咥えて食いしばりました。 うまれた子供は栗毛で青い目のぱっちりした子でした。わが子のあまりのかわいらしさにむせび泣きました。
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