濡れ衣泥棒 ―オレは絶対にやってない!―

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濡れ衣泥棒 ―オレは絶対にやってない!―

 オレは小学4年生の、仁科(にしな) 裕貴(ゆうき)。  小学校では、成績優秀かつ優等生で、4年2組の学級委員を務めるほどだ。  そんなオレが、たった今緊迫した状況にいる。 それにはわけがあった――。  ――クラスのガキ大将、浜田(はまだ) 大将(ひろまさ)というヤツが、鈴木(すずき)文房具店でオレが万引きしたと嘘の噂をでっち上げたらしい。  当然 噂は広まり、今や児童は愚か学校の先生ですらオレを捜索している。  浜田のヤツ、これまた壮大な嫌がらせだ。  きっと、見つけ出したら文房具店に突き出すのだろう――。 「いたぞ! ここだ!」  ボーッと草の茂みに隠れていたら、案の定 浜田に見つかってしまった。  オレは必死に走り、公園を後にした。 しかし、逃げた先は同級生が待ち構えている。  後ろから走って追いかける浜田は、不敵な笑みを浮かべ、口を開いた。 「へ! 文房具店で万引きした天罰さ。 おとなしく観念しろ!」  一方、待ち構えている同級生たちは声を上げる。 「おーい! 仁科! 万引き犯だってな! 優等生のお前が法を(おか)すとはな。 アハハハ!」  ――前方には、同級生が数名 道を塞いでいる。 後方に引き返せば、ガキ大将。 ここで捕まったら、本当に万引き犯だと思われてしまう――。  そして、オレは待ち構えている同級生を無視し、とある住宅の塀を上った。 「クソ! 仁科のヤツ! 待ちやがれ」  浜田が声を荒げながら塀を上ってきた。 (まずい……捕まる……)  オレは仕方なく塀を下り、その住宅に住んでいる人に助けを求めた。  その人は、浜田の母親だった――。 「おい! 大将(ひろまさ)! また仁科君に対して、嘘の情報をでっち上げたりして! アタイは知ってるからな! 後で百敲きの刑だよ! 覚えときな」
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