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昨晩悩みに悩んだが、課長と連絡先を交換したことは晃河に伝えない事にした。
晃河は本当に心配症で私が一人暮らしを始めることに大反対だった。しかも新幹線を使って2時間もかかる東京で始めるなんてと血相を変えてあの手この手と必死に引き留めようとした。もちろん背に腹は代えられないのでなんとか落ち着かせたが、本当に過保護である。
それにしてもこの壁、高すぎやしないか?
課長に指定された住所に辿り着いたがヒト2人分はあるかというほどに高い壁。
奥には何やら建物があるのでこの中だと思うのだが、四方八方を壁で囲まれた大きな敷地は歩けど歩けど壁かべ壁。
ここが入口ですよってマップに表示してくれていれば最短ルートが最長ルートにならなくてすんだのに、ぐるっと回ってようやく鉄の扉が現れた。
壁にポストもカメラ付きのインターフォンもあるのでここが入口で間違いない。
課長から指定された通り、インターフォンのボタンを押す。
暫く待つと通話状態になったのか雑音のようなものが聞こえてきた。耳をインターフォンに近付ける。
「おお来たって、おい! 近すぎだ」
いきなりの大きな声に耳がキーンとなる。
「す、すみません」
私は咄嗟にインターフォンから距離を取る。
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