化け狸の呪い

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 ***  いやいや、待て待て。うちは化粧品会社だぞ。  それなのに鏡が見られない、自分でメイクができないだと?  なぜうちはこんな社員を雇ったんだ? ファンデーションしかしていないのなんて面接時点、いや、証明写真で十分分かっていたじゃないか。  祖母は何を考えている。  本当にこの女を落とせば社長にしてもらえるんだよな。  俺の手で見違えるように可愛くなった女を目の前にして俺はそんなことを考えていた。  それにしてもこの女、笑うと可愛いじゃないか。  お手間でなければお願いできますか? ニコって。潤んだ目で一層可愛さを増してやがる。  いやいや、この女が可愛いわけではなく、俺のメイク力が凄いだけだ。  己の才能が恐ろしい。 「とりあえず、プライベートの連絡先交換だ」 「え?」 「家に来るなら今どこだとか明日は何時にとか連絡取り合う必要あるだろう」  というのは口実だ。とりあえず特別感を持たせ、連絡が来るのかな、来ないのかなともどかしい気持ちとやらを味わわせてやる。  想像していたより展開は早いが、まあいいだろう。 「ああ、そうですね」  この俺のプライベートの連絡先を喉から手が出るほどに欲している女が数多くいるというのに、なぜそんなに嫌そうな顔をしている。
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