1

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

1

「また、留年ですか?」 「そう、みたい」 「そうみたい、て。同じクラスの同じ席でこうして向かい合ってお話してる時点で、ね」 「うん、まぁ同じクラスだから、また、勉強、よろしく」 「嫌です」 柿谷先輩が落ちてきた。二回目だ。 バスケ部のエースで名門大学から声を掛けられる程の逸材が、しょうもない事で躓いて留年するなんて。 最初こそ、同じ部活の後輩としてテスト対策だなんだと協力した。私ですらまだ学んでない教科書を一緒に開いて、担任のゴリ松も手伝ってくれて。恩返しのつもりで一緒に対策した、柿谷先輩には本当に良くしてもらったから。感謝の気持ちで共に居残りして教えたのに。 また留年するなんて。 「名前書き忘れて、とかじゃないですよね?」 「そんなんで落とされたら厳し過ぎる」 「やっぱそうですよね。あの、何でそんなに冷静に鼻に指突っ込んでいられるんですか? 留年したんですよ? またやり直すんですよ?」 「そだな」 「しかも、私と同じ学年になったんですよ!? 二個下の後輩と!」 「おー、蟹川も三年生になったのか」 「感慨(かんがい)深くなってる場合か!! あんた何年生だ!?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加