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その日の夜、私はカナダから帰郷した伯父さんと家族みんなで中華料亭で会食をした。
繁華街の一角にある昔ながらの中華料理屋。回転テーブルで食事なんて何年振りだろうか。
太っ腹なカナダの伯父さんが「奢ったる。今日は俺の奢りだ」と気持ちよさそうに会計している間、私は外の空気を吸いに先に店を出た。
寂れかけた商店街の交差点。明かりが灯るのはどれも飲食店。スナックの多い場所。
交差点の向かい側に背丈のあるスーツ姿の、見慣れた人影が歩いていた。
「柿谷先輩?!」
見間違い、ではなかった。両手に食材や酒、日用品の入ったレジ袋を持った柿谷先輩が歩いていた。
「柿谷先輩! 何してるんですか?!」と、私は交差点を走って渡り、人影を呼び止めた。
「あ、蟹川」
「何ですかその格好! ホストみたいにカッコつけて!」
「うん。ホストしてるからな」
「……え?!」
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