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話を聞くと、 柿谷先輩の家は父親が隠していた借金で大きく家庭崩壊を招いていた様だ。 母親は借金の額を知って即離婚。たった一人で他県に移り住んだとか。 「酷い」と私はつい口に出したが柿谷先輩曰く「養育費はチャラになった」と言う。そんな問題なのか。 小学四年生の長女、幼稚園児の次男、働かずに飲んだくれる父親。 そんな家族を一人で支えるべく柿谷先輩は夜の世界に入った。 「いつからです?」 「最初に留年する前の夏」 「じゃあ未成年で働いてたの?!」 「黙ってたら成人に見えるから」 「良くないです!」 辻褄が合った。放課後の電話先もホストクラブへの連絡だった。 留年を繰り返していたのも、働き詰めで勉強どころではなかった。 「先生に相談しようよ」 「いや。何もできねぇよ」 「生活保護とか」 「そんな簡単な話じゃないって」 「分かるの生活保護?」 「マフィアが警察と取引するやつでしょ?」 「それは、あれでしょ。何だっけ?」 「保護観察だ。 村西が自転車盗んで家庭裁判所行った時の」 「違います。あ、証人保護プログラムだ!」 「……何の話だっけ?」 柿谷先輩の秘密を知った私は、先輩をどうサポートしたらいいのか、分からなかった。 「酒が(ぬる)くなると怒られるから、ごめん蟹川、もう行くわ」 逃げる様に柿谷先輩は寂れた商店街の中へ消えていった。 翌朝、スマホにメッセージが届いていた。 『おはよう蟹川。昨日はごめんな。もし、次落ちたら、俺、もう退学しようと思う。だから、今年がラストチャンスだ』 着信音に起こされた私は柿谷先輩の文面を見て即返事をした。 『諦めないで下さい! 全力でサポートします!』
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