揺るがぬために(一)

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揺るがぬために(一)

 晴れた空のもと、師弟は今日も道をいく。  宿を出たのは今朝のことだ。荒れ寺の攻防から二日経って、玉瀬はすっかり調子を取り戻していた。  しかし、苦い思いは残っている。誠意は歪んで伝わって、男は恨みを抱いたまま、町で処断されるのだから。 「……分かり合うって、本当に難しいですね」  それは、相手が異形だろうと人だろうと変わらない。 「何に重きを置くかは、それぞれ違うからな。正しいことなんて、実はひどく曖昧なのさ。だからこそ、揺るがないものをもっておくことが大事なんだ」  強い思いは、必ずや、迷った時の道しるべになってくれる。  師の言葉に玉瀬も深く頷いた。
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