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狡い言い方をすれば、姉も僕も異性とのキスは何度も経験しており、肉体関係を結んだ回数に差はあれど、複数の恋を思い出に変えてきた。
もっとも、寝ているあいだにこんなことをされているなんて思わないだろうけど、今さら潔癖になる必要もない。
徐々に深まっていく空の藍に描くのは、姉がもう一度僕の顔を見て名前を呼んでくれること。気のない女を振り向かせる行為が恋に似ているようで、しかし意地を張り過ぎている姉が辛そうにも見えて、僕は卑劣な賭けに出るしかなかった。
この魔法は日にち薬みたいなものだ。解れていくのを待つしかない。もしも効果が出てくれたら、すっぱりこれを終わりにし、姉が得るべき真の幸福を祈りたいと思っている。
しばらく経ち、月光が強くベッドを射した。浄化作用があるらしいこの光も、眠りを妨げるならば邪魔でしかない。
僕はそっとカーテンを閉め、一度寝姿を眺めてから、静かに部屋を出た。そして扉に触れ、密かな言葉をそこに含ませた。
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