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キミと僕に見せた夢
21年ぶりに
キミの姿を見た
僕から5メートルくらい先に
見せた事のない笑顔をして
見慣れない作業着を着て
キミは真っ直ぐ俺を見て
微笑み続けている
あの日より
少しふっくらして
あの日より
柔らかい表情で
キミは真っ直ぐに立っている
僕は
それが夢だとわかっていても
その姿にただただ見惚れ
一切の感情を出せずにいる
言えずにいる
キミへの想いは
全く言葉にならない
何事もなかったかのように
キミは僕に接してくる
何かを話しかけてくる
温もりさえ感じる近い距離にキミがいる
そんな僕は
幸せな時を過ごしているが
これが現実ではないことに
悲しさを感じながら
キミと再び会えた事
キミが笑顔を見せた事
キミに恋していた事は
確かだった事を思い出す
僕もだんだん笑顔が戻る
そんな至福の時は
突然終わる
白い花吹雪が舞い
一瞬にして
キミの姿はもうない
でも決して寂しくなかった
あれだけ恋焦がれたキミが
僕から去ったあの日以来初めて
夢に出て
僕を笑顔にして
キミも笑顔だったから
あの日のような
2人になった帰らざるあの日を
キミは僕に見せてくれた
キミが望んでいるのか
僕が望んでいるのか
答えはどこにもない
それでも僕は幸せだった
ボクは夢を見た
たった一度だけ恋をした彼
二度と顔も見たくないと
あの時思った彼の夢
彼はただ驚いた様子で
ボクを見て固まっている
その姿に
ボクは思わず笑ってしまう
彼に好きだと言われた時を
ふと思い出した
一生懸命に
ストレートに
ひたすら好きだと言ってくれた
付き合う意味
言ってしまえば好きの意味も
あの日のボクは分からなかった
彼は純粋過ぎてワガママで
ボクの事を本当に好きなのか
不安しかなかった
あの頃のボクは
環境が変わり
それについていくのがやっと
彼はそんなボクに
休みの日は必ず会いに来いと言った
片道2時間近い距離を
彼の為ならと思い向かう
ボクの悩みを受け入れてくれるかと
淡い期待を込めて
でも彼は話を聞かず
あちこち連れ回したり
賑やかな場所に行ったりする
ただ穏やかに
2人で居るだけでよかった
支えて欲しかっただけなのに
そんな彼は
弱音を吐いたボクを叱った
あの頃のボクには耐えられなかった
一瞬で冷めた
今なら彼の気持ちも理解できる
だから夢の中でボクは
それが伝われと願い
精一杯彼に笑顔で話かけた
彼はずっとキョトンとした
そんな表情ばかり
あの時にすればよかったかな
でもボクの事をあれだけ
好きと言ってくれた彼なら
わかってくれてるはず
最後の最後に彼の笑顔が見れた
その姿を焼き付けて
ボクの夢も終わりを迎えた
この夢は
僕自身が見せた夢に違いない
キミを忘れられず
忘れる事が怖く
でも忘れゆくキミ
もういい加減
ボクの事は忘れてと
キミが僕に言っているようだ
だから
キミは笑顔だったのだ
例え数億分の1の確率で
僕とキミが再会しても
キミがあんな笑顔を
見せるはずなどないと
ボクは誰よりも知ってる
多分キミは今幸せなんだろう
僕の夢は
僕の独りよがりで
僕の惨めさの裏返し
それをキミは僕に
思い知らせたのだろう
二度と僕のものにはならない人
僕も今を捨てる事は出来ない人
若き日の
美しい思い出に
涙が出てしまうけど
それは
あの日の2人が
若さに任せ
感情をぶつけ
そしてすれ違ってしまった証
悲しみじゃない
そんな淡い思い出を
作ってくれたキミを
好きになったこと
短い間でも
僕を好きになってくれた事
感謝しないといけない
僕の名を呼んでくれて
一緒に眠ったあの日
幸せだった
でももう
忘れないといけない
キミは
それを伝えるために
21年も経って初めて
それも21年後の姿で
僕の夢に
現れてくれたと
僕は
わかっている
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