昭和警察

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炎ヤマトはショットガンを両手で持って正しく肩づけし、泥棒――金田小五郎に狙いをつけた。 「おい、冗談だろ」 泥棒は両手を前に突き出して、いやいやをして見せた。炎はショットガンの狙いを泥棒の胴体の真ん中に持ってゆく。 「おいよせよ。よせったら。俺はただのトイレットペーパー泥棒だぞ」 泥棒の金田は後退りしながら、煤だらけの顔を左右に振った。 「もうしないから、二度と泥棒しないから勘弁してくれや」 泥棒は両手を合わせて懇願しながら後退りしてゆく。 「師団長!」団員たちが固唾を飲んで見守る中、炎ヤマトはショットガンの引き金から指を離し、銃口を泥棒の金田から逸らした。団員たちがほっとして胸を撫で下ろしている。 だがそれこそが落とし穴であった。団員たちに一瞬の油断があったのだ。金田小五郎は館刑事に決死の体当たりを食らわし、マグナム拳銃を奪い取ったのだった。 「プロの泥棒を舐めんなよ。この世の中は食うか食われるかだ。ぼんやりしてるやつが悪いんだ」 金田は盗み出したマグナム拳銃の引き金にかけた指先に邪悪な力を込めた。しかしそれよりも早く炎ヤマトはショットガンを両手で構えなおしていた。ショットガンが轟音を発し、それと同時に恥ずべき泥棒の悪あがきは終わりを告げていた。生まれついての泥棒が人生最後に盗み出したマグナム拳銃が、地面に転がり落ちて赤い火花を散らした。反省とはまるで無縁な卑劣漢は悪賢く盗み出したそれを道具として使うことなく自らの寿命をすっかり使い果たし、やがて世の人々から完全に忘れ去られてゆくのだった。 泥棒に栄光はない。それは昭和であろうとなかろうと。 了
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