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犯人を逮捕して事件が解決した後は刑事部屋で円陣を組んで祝杯だ。酒は国産ウイスキー。石浜課長が差し入れてくれた。石浜課長は炎ヤマトと団員たちの最大の理解者である。
「課長の奢りだ」
炎が乾杯の音頭をとった。血気盛んな寺井と館がイッキ飲みをして場を盛り上げる。
「それイッキ! イッキ!」
飲めるやつも飲めないやつも、みんなそれぞれのペースでグラスを傾け、仲良く酒盛りだ。
「おう! 館、寺井、いい飲みっぷりだ」
炎は団員たちと笑顔で酒を酌み交わす。
和やかなひとときは、黒電話のけたたましいベルの音によって呆気なく終わりを告げた。
炎はウイスキーのグラスを放り出した。受話器をつかんで取り上げ、それを角刈り頭の耳に押し当てる。
「何だと? 金田小五郎が留置場から逃げ出した? よし。後の始末は俺たちにまかせろ」
炎のただならぬ声を耳にして、団員たちはグラスを放り投げてマグナム拳銃を手に取った。
「師団長!」
「師団長!」
受話器を置いて、炎は団員たちひとりひとりを見据えた。
「金田小五郎が留置場から脱走した。金田小五郎は見張りの巡査から拳銃を奪っている。俺たちの出番だ!」
「押忍!」
金田の脱走は留置場係の巡査の完全なる落ち度だが、昭和警察は細かいことにはこだわらない。誰かの失敗をあげつらってネチネチと責め立てたりもしない。誰であろうと間違うことはある。泥棒が逃げたならまた捕まえればいい。たとえパトカーが何台何十台何百台横転して爆発炎上しようともひたすら追跡あるのみ。そいつが俺たち昭和警察のやり方だ。
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