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銃弾八百発あまりを消費し、パトカー三十台あまりをスクラップにして、炎ヤマトら昭和警察はついに脱獄犯金田小五郎を追い詰めた。
袋のネズミとなった逃走車は、道路を封鎖するパトカー軍団に真正面から激突して爆発炎上。巨大な火柱を上げながら、大量のパトカーを誘爆して派手に燃え上がらせた。その数、二十台。累計で五十台あまりのパトカーが燃えて屑鉄と化した。
金田小五郎は黒焦げになりながらも奇跡的に無傷であった。炎ヤマトは拳骨を振り上げ、金田小五郎を殴り倒した。拳銃を奪い取り、金田の胸ぐらをつかんで腕を捻り上げる。
「金田小五郎、貴様を逮捕する!」
銀色に輝く手錠を、腕が折れるぐらいの勢いで叩き込む。昭和警察には犯人逮捕に関するタブーはない。昭和県ではテレビの報道番組でも被疑者の手錠にモザイクをかけるような無意味で軟弱な真似はしない。
「ちくしょう。次は上手く逃げてやる」
金田小五郎はがっくり項垂れながら、ついには観念して果てた。
炎ヤマト率いる昭和警察軍団は、完全に封鎖した道路を一列横隊になって練り歩いた。昭和警察のエンディングテーマを歌おうとしたその矢先――交番巡査が貧しい身なりの小学生を引っ立てながら、炎ヤマトたちの前に現れたのだった。
「どうしたのだ?」
炎ヤマトの問い掛けに、交番巡査は敬礼しながら答えた。「炎師団長、この子は泥棒なんです。通報した駄菓子屋の店主の話では、この子に十円の駄菓子を盗まれたとのことです」
「泥棒したのか」
炎ヤマトは身を屈め、小学生と同じ目線に立った。
小学生は炎ヤマトの目を見て頷いた。
両手に手錠が回った金田小五郎は「そのガキも逮捕しろ」と息巻いている。
「なぜ泥棒したのだ。言ってみなさい」
炎ヤマトは小学生の肩に両手を添えた。
小学生は語った。自らの境遇を、涙ながらに。父親は蒸発。母親は生活のために朝から真夜中まで働き通し。それでも生活は苦しく、食うや食わずの毎日。腹が減って腹が減って、気がついたら店先から十円の駄菓子を盗み取っていた。
「そいつも泥棒じゃねえか。マグナムで狙い撃ちしてぶん殴って手錠をぶち込んだれや」
金田小五郎が吐き出す薄汚い野次を、炎ヤマトは右から左へ聞き流した。
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