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国士無双の必要牌である一索が捨てられたことに、門脇は眉を顰めて怪しむ。
「早くも聴牌ですか。素晴らしい。
ですが、先程も申し上げたように、国士無双ごときでは私に敵いませんよ」
門脇を始めとして他の2人も副露の速度を上げた結果、遂に全員が聴牌状態へ。
もはや誰が和了ってもおかしくない。
柴崎は敢えて一索を捨てたがために振聴となり、
たとえ誰かの捨て牌が么九牌であっても
ロン和了することはできなくなっていた。
要はこの巡目で么九牌を引かなければ、ほぼほぼ彼の敗北が決定するのだ。
退路を断たれた柴崎が眼前に迫り来る三人と対峙する。
牌山に近づく右手は彼の制御下にない。
限りなく低い実現可能性に望みを託す者が武者震いするのは至極当然である。
熱の籠った手の平は感覚をすっかり失っていた。
肉眼で確認するまで真実はいくらでも曲がり得る。
鷲掴みにした牌を徐に開く柴崎。
自分が果たして正気かも判断できない彼でも、風雅な煌めきは刹那に感じられた。
呼び寄せた一索を、高揚する吐息に乗せて手牌横に打ちつける。
かつて辺縁の地に墜ちた鳳凰は、柴崎の情念を纏い力強く蘇ったのだった。
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