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「……ツモ!」
一時の静寂が卓上を過ぎ行く。
目を見開いた門脇は大袈裟に音を立てて拍手する。
手を規則的に打ち付ける行為の裏に称賛の気持ちなど微塵もない。
「おめでとうございます。さすが柴崎先生だ。
あれだけ苦しい状況で2着に這い上がられるとは。国士無双……」
開示された手牌を一瞥し、門脇は派手に椅子から転げ落ちた。
遂には腰を抜かしたまま後退りして怯え出す始末である。
緒方と伊部も手牌を覗き込むや否や、声にならない悲鳴を上げた。
「13面待ち……!?」
手を下すことなく敗者を追い出した柴崎は表情一つ変えずに淡々と言い放つ。
「得点申告が遅れてすまなかった。16,000・32,000だ。
計64,000点きっちり耳を揃えて頂戴するぞ」
国士無双は大抵単騎待ちになりがちであるが、
国士無双13面待ちはどの么九牌が来ても和了れる国士無双の最高形。
役満の中でも珍しい二倍役満とされ、
得点も通常の国士無双の倍の64,000点を誇る。
柴崎は土壇場で奇跡を具現化し、負の世界から頂点にまで上り詰めた。
右も左も分からなかった未熟な自分を救ってくれた鳳凰の背に身を委ねて。
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