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痺れる緊張感の最中、各々に持ち点25,000点を割り振り、
東1局の火蓋が切って落とされた。
13枚の手牌を組み合わせて役を作ることで、
互いに点数を奪い合うのが麻雀という競技である。
「……立直」
6巡目にして早くも立直棒を出した柴崎。
あと一枚目当ての牌が見えれば和了となる聴牌状態である。
彼の手牌から成立する役は、立直・平和・一盃口・ドラ3であり、
跳満18,000点が確定していた。
親は子に比べて得点が1.5倍に増える絶好機。
出だしからリードを広げたい柴崎の正面で、若手筆頭の門脇九段が鼻で笑う。
「柴崎先生、三・六萬待ちでしょ?」
傍からでは分からないぐらい微かに柴崎の眉がぴくりと反応する。
彼がどの牌を欲しがっているのか、
"麻雀奇術師"との異名を持つ門脇はいとも簡単に把握し切っていた。
麻雀の基本的な流れとして、手順が回るたびに牌山から一枚引き、
代わりに不要な手牌を一枚捨てる。
その捨て牌の並びを"河"と呼び、
上級者はそこから相手の手牌をおおよそ推測することができてしまうのだ。
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