飛べよ老鳳凰

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 慎重に防御の姿勢を見せる柴崎の陰で、 鳴りを潜めていた4人目 伊部七段が存在感を顕わにする。 「チー!」 手持ちの二・四索(リャンスーソー)を公開し、門脇の切った三索(サンゾー)を副露する伊部。 続いて柴崎が九筒(キューピン)を捨てると、彼はまたもや大声を上げた。 「ポン!」 卓を囲んだ雀士たちは、3枚1組の面子(メンツ)を4つ、2枚1組の雀頭(ジャントウ)を1つ、 手牌の中で完成させることを目標に見据えている。 雀頭は同じ牌のペアに限られ、 面子は一萬(イーマン)二萬(リャンマン)三萬(サンマン)と連続した数字で作る順子(シュンツ)と、 四萬(スーマン)3枚のように同じ牌で作る刻子(コーツ)の2種類に分けられる。 そこで面子を作る際に手助けとなるのが副露である。 他者が捨てた牌を利用して順子を作る場合は「チー」と、 刻子を作る場合は「ポン」と発声すればよい。 ただし副露は、総じて得点が安くなりやすいデメリットも併せ持つ。 また、役の中には一度でも副露をすると成立しないものがある。 実際、伊部の手牌には役がなく、このままでは和了(アガ)ることができなかった。 それにもかかわらず、伊部は深淵を映す面持ちで むやみやたらに副露し続けるのだった。
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