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耐え難い放銃のショックに沈みながらも、柴崎はふとした違和感に勘づく。
通常、守備に定評のある彼が和了牌を出すことは滅多にない。
正当に4人で周回していれば、
他者の捨て牌を手掛かりに安牌を見出しやすいからである。
ところが、どことなく柴崎は
牌山を触る回数が自分だけ多い気がしてならなかった。
まさしく最後の牌を引くことも約束されていたかのように。
──そうか……。まんまと嵌められたな。
膨れ上がる疑心は違和感の正体を突き止めた。
一見無駄な動きに見える伊部の副露こそが、この大量失点の元凶だった。
副露を行った人は牌山から引かずに手牌を一枚捨てる。
つまり、副露のたびに最後の牌を引く人が右隣へずれることになる。
伊部はできる限り柴崎が牌を交換するタイミングを増やし、
門脇の待ち牌を引き当てる可能性を徐々に高めていっていた。
このように巧妙な作戦には他者との協力が必要不可欠。
熾烈な戦いが繰り広げられる雀卓の下で、
門脇、緒方、伊部は涎を滴らせて手を組んでいたのだ。
没落の兆しを見せた柴崎をここぞとばかりに地の底へ陥れるために。
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