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続く東3局はあろうことか門脇が親番。
柴崎と門脇との点差は言うまでもなく急速に開いていく一方だった。
孤軍奮闘の痛苦に唇を噛み締める柴崎を前にしても、猛攻の手は一切緩まない。
何を捨てようと流局を待たずして溌溂とした「ロン」の声が飛び交う。
袋叩きに遭った柴崎の持ち点はとうに0を下回っていた。
立直棒を出すには1,000点の代償が要求されるため、
持ち点がマイナスでは立直さえできない。
立直ができなければ、点数の上乗せは一気に難化する。
必死に逃げ道を探す柴崎は、苦し紛れに三色同順を成立させ、
門脇の親番をどうにか終わらせた。
しかし、その過程で彼は副露に手を出した。
最終局に望みを繋げるためとは言え、
信条に背く振る舞いをする自分を疎ましく思った。
対局もいよいよ大詰め。東4局が幕を開ける。
柴崎の疲れ果てた姿を横目に、席を立ち上がる門脇。
「柴崎先生どうされました? 圧倒的最下位じゃないですか!」
緒方と伊部からも忍び笑いが漏れた。
柴崎に目と鼻の先まで詰め寄った門脇が本性を曝け出す。
「さっさとどいてくれますか、その雀神の席?
はっきり言って目障りなんですよ。
先生がそこに居座ってたら、皆よくない麻雀を真似しちゃうでしょ? ね?」
年齢も麻雀スタイルも全く異なる柴崎と門脇は、
戦術について真っ向から衝突することがしばしば。
あまりに議論が白熱し、他の麻雀プロが止めに入る光景も日常茶飯事である。
とうとう堪忍袋の緒が切れた門脇は雀神決定戦出場者を買収し、
決勝の舞台で柴崎を公開処刑する意思を固めたのだった。
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