闘い終わって

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 「やれやれ、やっと終わったか・・・」  紅蓮坊は言葉を発しながら、どっかと席に座った。  巴、兵衛、遼河にかえで・・五人は一つの食台を囲んだ。そこに源三の姿は無かった。  「源三様の用とはなんなんでしょう。」  巴は兵衛に問いかけた。  「私にも解りません。  まあ、押っつけ源三様も参られるでしょう。」  ところで・・・紅蓮坊は食台の上にどんと金袋を置いた。  「この金はどうする。」  「私のもだよ・・・」  巴も同じ様に金袋を置いた。  「二人合わせて金貨七十・・皆で分けるか。」  紅蓮坊は豪快に笑う。  金貨七十・・・その声に店の中がざわついた。  「あんた・・軽々しく言うんじゃないよ。」  巴がそのざわつきを見、兵衛に目配せをした。  「怪しげな者達も居ます。  金額の話しは止しにしましょう。」  兵衛は小声で言った。  「今晩は一カ所に纏まったが良さそうね。」  巴が頷きながら言う。  ごめん・・・そこへ雉が金袋を持って入って来た。  「貴方達の給金だ。」  金袋は四つ。それにはそれぞれ名が記してあった。  随分丁寧だな・・・紅蓮坊は自分の名が認(したた)められた袋に手を伸ばした。  「紅蓮坊殿、手伝ってくれ。」  記事は金袋を懐に収めた紅蓮坊を店の外に誘った。  「あんた等随分と羽振りがいいようだな。」  紅蓮坊が店の外に出るとすぐに、何人かの柄の悪そうな男達が兵衛達の席に近づいてきた。  兵衛は背丈はあるが身体は細い。それに女と子供・・彼等はそれを嘗めてかかったのだろう。  「止したが良いよ・・怪我をしますよ。」  巴は静かに言った。  「おうおう・・おなごが偉そうに何か言っているぞ。」  男が一人巴の顔に酒焼けした顔を近づけた。  パン・・・その頬が強かに打たれた。  この女郎(めろう)・・・男は後ろに下がり、巴を睨み付けた。  「これだけの金子を貰うと言う事は、それだけの力があるという事ですよ。」  兵衛が立ち上がり、巴に掴み掛かろうとするもう一人の男を投げ捨てた。  遼河はかえでを護って・・・巴も席を立った。  あのがき共を・・二人が遼河とかえでの元に迫った。  その手が遼河の木刀に打ち据えられる。  「おいみんな、こいつ等はとんでもない金子を持っている。  こいつ等を叩き伏せればそれを手に入れられるぞ。  奪えばみんなで山分けだ。」  ならず者の首領格なのか、男が一人店中に響く声を上げた。  その声に店中の金に飢えた男達が呼応した。  チッ・・・巴は舌打ちをした。  人は斬りたくない・・その思いは兵衛も遼河も同じだった。  あのがきを人質に取れ・・・数人の男がかえでに迫った。  かえでの横でげんたが唸る。  犬っころが・・・一人が拳を振るった。  その腕にげんたが噛みついた。  げんた、だめ・・それをかえでが止めた。  その時にはもう、殴り掛かった男は血を流し、悲鳴を上げていた。  もう容赦しねえ・・・首領格の男は匕首(あいくち)を抜き、他のならず者達もそれに倣った。  何をやっている・・・大きな革袋を担いで外から帰った紅蓮坊が、大きな手で息巻いている男の頭をはたいた。  それだけで男は大きく弾き飛ばされ、気を失った。  その後ろには雉も居た。  「金狙いですか・・・  私も相手になりましょう。  但し、私はこの人達ほど優しくはありませんよ。」  雉は後ろ腰に差した二本の鎌を抜き、その革鞘を払った。  あっという間にそれに手を出した男の手首が床に落ちた。  「あなた方は源三様の宿所へ・・源三様にはここには来るなと伝えておきます。  それに後ほど分け前は頂きにあがります。」  一人で大丈夫か・・紅蓮坊が怒鳴る。  「私には部下がいます。」  紅蓮坊は雉が笑うのを初めて見た。
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