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闘い終わって
鬼若を斃して三日後・・・
「あんたもかい。」
花の御所に向かう道すがら巴は紅蓮坊に声を掛けた。
「おお・・巴・・・」
紅蓮坊は振り向き様に言った。
「お前も呼ばれたか。」
紅蓮坊は抱きつきそうな勢いで巴に近づき、巴はそれをすらりと躱した。
「おやおや、お揃いで・・・」
肩透かしを食らった紅蓮坊に源三の声が聞こえた。
「お揃いって・・たまたま会っただけですよ。」
はははは・・・源三は巴の応えに、快活な笑い声を上げた。
「ところで、源三殿はどちらへ。」
「あなた方と同じですよ。」
そう言って源三は二人と歩を合わせた。
「二番隊は・・・」
「私達三人のようです。」
「三人・・・」
紅蓮坊が横から疑問を呈した。
「俺達はまだ誰も今年の俸給を貰ってないぞ。
それを三人だけとはどう言うことだ。」
紅蓮坊の声は僅かに怒りを含んでいた。
「今日はこの間の鬼若退治の件だと聞いています。」
「なら尚更じゃ無いか。
兵衛と遼河はなぜよばれない。」
「そう私に言われても・・・」
源三はそれっきり口をつぐんだ。
西の侍所は焼け落ちたため、今日は東侍所の庭に集められた。
そこにいる面々は、京見廻組局長安藤宗重、御庭廻組一番隊、鬼木元治、菊池主水の介、それに国立京ノ介が居た。壇上には前村教貫、二番隊隊長晴海和尚、その後ろには上下姿で近衛組の面々が列んでいる。
と言う事は・・・
紅蓮坊が考えている間に太鼓が鳴り、小姓が将軍の登場を声高に告げた。
皆が上座を向き平伏する。
その中に奥の寝殿から将軍足利義政が現れた。
「大儀・・皆頭を上げよ。」
義政の声は晴れ晴れとしていた。
その声に皆が居直る。
「先の鬼若退治、皆ご苦労であった。」
それに続き庭に向き直った教貫が声を上げた。
「此度は将軍様ご列席の下、論功勲章を行う。」
教貫は自身がそれを行うかのように鼻高々で言った。
「まず・・・」
「まあ待て。」
その後ろから将軍直々の声が掛かった。
「残念ながら此度の闘いで西侍所は焼け落ちた。」
義政の話はそこから始まり、巴は少し身を強張らせた。
「だが、儂が鬼に悩まされる事は無くなった。
侍所を焼きはしたが、鬼の木像を見つけたのも、鬼を伐ち伏せたのも同じ女だと聞いた。
よって、その罪は不問とする。」
「鬼の首を打ったのは、私めにございます。」
教貫は義政に向き直り、頭を下げ言葉を発した。
「それも聞いておる。
鬼が変化(へんげ)した幼子の首を打ったとな。」
しかし・・・教貫は言い淀んだ。
「まあ鬼にとどめを差したのは事実。
その方には金貨二十を与える。」
それを聞いての教貫は床に頭をこすりつけた。
「将軍様・・・僭越ではございますが。」
今度は晴海が義政に向き直った。
「その巴を始め、二番隊の連中、並びにここに居る一番隊の鬼木元治を推したのは私でございます。」
晴海もまた自身の功を誇った。
「確かにその方が選んだ者達の活躍はあった。
それには金十で報い、以前渡しておいた活動費に金百を加える。
今後も諸国を旅し、鬼に対する者を集めよ。」
義政の話はそこで終わり、その場を立った。
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