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先輩なら少し微笑むだけで周囲が頬を染めて自らが何もせずとも寧ろあちら側から近づいてきてくれるだろう。
この顔で甘えられたら断れる人なんてきっといない。二つ返事で率先して何でもしてくれるだろうに…
『本当に俺でいいの?』
「お前じゃなきゃ、ダメだ。」
『…先輩』
ぎゅっと俺の両手を自らのそれで包み込み懇願するように他の誰でもなく俺と言う存在を強請る。
「キスしたい。…ダメか?」
『ううん』
誤解されないように直ぐに首を振った俺にほっとした先輩がゆっくりと俺に口付けてきた。ずっとキスしたくなる…しっとりとした柔らかくて甘い唇だ。
俺はまだ先輩とは少ししか関わっていないのに沢山の顔を見てきた。きっとそこら辺の人達よりははるかに。
冷血とまで言われた仮面が剥がれた姿はとても人間らしくて歪んだ顔でさえ美しく感じる。そっと先輩の顔に両手を添えて口付け返す。
『ん…っ先輩…』
何度目かの口付けを終えてジッと先輩が俺の顔を見てからハッとした顔をさせた。
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