始まりの合図

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始まりの合図

緊張しながら俺は父さんについて行き、父さんが働いている会社の社長さんとその息子さんに挨拶する。まさか世界一である製薬会社の社内パーティーに出る事になるとは思わなかった。真新しいスーツを身を包んだ俺の心臓は内心バクバクだ。 「うちの息子の稲葉宝です。」 『宝です初めまして。父がお世話になっております。』 笑みを浮かべてそれぞれと握手を交わしてからゆっくりと離れる。ちゃんと自然に笑えていただろうか。心配だったが不審がられずに社長さんに全身を一瞥されるなり頷かれた。 「ほお、中々の好青年ですな。スポーツを何か?」 「えぇ、頭はからっきしですが運動神経だけは無駄に良いのでスポーツ推薦でこの度無事大学に入学出来ました。」 何だか照れくさくて自身の頭を搔くと社長さんが微笑んでくれた。と言うか父さん、俺が頭悪い事を態々言わなくてもいいだろ。毎回一言余計なんだよ。 「それは良い。おめでとう宝君」 『ありがとうございます』
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