3 アメシスト

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彼はまだしゃがんだまま、 立ち上がった私を見上げていて。 その瞼が初めてしっかりと開いて見えたから、"いつもは眠そうなのにちゃんと起きてる"って、また、意味の分からない事を思った。 後ろで黒髪をハーフアップに纏めた人 華やかな出で立ちで、綺麗な顔をした男の人 女の人と同じ、艶美な雰囲気を帯びた人 …耳にいっぱい穴開いてた。 軟骨?にもピアス刺さってたけど、ああいうのって開けると痛いのかな。お洒落なブレスレット付けてたけど、どこで買ったんだろう。 その場を離れた私の頭の中には、そんな彼に対する些細な疑問と、好奇心が渦巻いていて。 『····もう、関わる事も無いか』 そう視線を落として、我に返る。 自嘲気味に笑った私が、放課後の廊下に影を残した。 ――あの日から、
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