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廊下ですれ違う時、
彼を含んだ集団の近くを通る時。
『……』
『……』
何故か彼と目が合って、逸らすようになった。
話さない。
挨拶もない。
会釈もサインもない。
ほんの少し、目が合うだけ。
長めの前髪から覗く双眼が、焼き付くように瞳に映る。彼を見付けたら『目が合う』と身構えて、すれ違った後は、彼の事で頭がいっぱいになった。
顔が熱くなる。
何故か、彼の事が頭から離れない。
――そんな関係が暫く続いて、壊れたのが半年前。
あの日と同じ昼過ぎの校内で、グイッと引かれた腕に振り返ったら、窓の外に立つ志貴が居た。
「·····え?」
別棟の一階で、周りには誰も居ない。
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