3 アメシスト

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いつも志貴の周りを囲っている、 騒がしい友達も居ない。 何も言わずジッと見てくる志貴を見て、私も周りを見渡した後に、志貴を見返した。 『なに?』 『いつもそれ持ってんね』 私の手には、あの日と同じ教科書と参考書の山。 『進学クラスだから…』 『知ってる』 『勉強、嫌いじゃないし』 『それも知ってる』 数回瞬きを落とした後、掴まれた腕を見る。 もう一度志貴に視線を戻しても、状況は変わらず。 ····· 離してって合図のつもりだったんだけど、志貴は更に掴む力の強さを強めて、その腕を自身に引いた。 私の二の腕が持ち上がって、そこを見ていた私の視線は必然的に上がり、志貴の瞳と絡み合う。
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