4 アメシスト

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離れた距離で合わさった視線は、以前のように一瞬で逸らされる事は無い。 数度の瞬きを置いて、彼は隠れるようにポケットに入れていた右手を、ひらりとお腹の辺りで振ってみたりする。 そうして少しだけ、顔を逸らして笑うんだ。 「っ、」 『なぁに笑ってんだよ!アイジン』 『笑ってねぇよ』 『笑ってたね!俺は見た!』 『キモ。』 『なになに?水岸は見たぞの?』 『····なんだそれ』 良く分からない藍仁志貴。 雲みたいで掴みづらい、アイジン。 "考えて"と言われた後、結局一ヶ月近くしっかり観察するだけで、返事をすること無く。その後立て続けに連休、テストがあって返事をすっかり忘れていた。 あの日と同じ廊下。 同じように二の腕を掴んだ彼に『今更断らねぇよな?』と脅されたのを機に、私達の奇妙なお付き合いが始まった。 付き合うといっても、普通の恋人同士がするようなデートやLINEのやり取りを私達はしない。電話もしないし、お昼にお弁当を一緒に食べる事も、登下校もしない。
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