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静かに怒った志貴の圧に押されて、つい口走ってしまった。時を見て整理してから言おうと思っていた疑問が、短い言葉でポロリと口を付いて出て。
そんな私を、志貴は少しビックリした顔で見ている。
ちらっと見たら目が合って、直ぐに逸らした私を前に徐に立ち上がると、志貴は私の隣に来て腰を下ろした。
そのまま、覆うように抱き締められる。
「…え?」
「"しない"じゃなくて、"出来ない"んだけど」
「……」
「軽い男とか、傷付けたりしたくないじゃん。鞠が俺の事どう思ってんのかちっとも分かんねぇし、でも俺は本気で好きだし、フラれたくねぇし。一生大切にしたいと思ってんのに…」
結ってないからボリュームのある髪がくしゃりと頬を擽って、私の首筋に埋まる。ホワイトソースの香りに混じって、志貴の清涼感ある、シャンプーの香りがした。
志貴は身体を離して、
私の肩に手を置いたまま、私の顔を覗く。
平行眉の下から三白眼の瞳を覗かせて、瞬き一つで色気を放ち、「良いって事だよね?」と。
聞いた癖に答える暇を与えず、唇が触れる。
後ろ首を引かれてトンとぶつかった唇が、思っていたよりも柔らかくてビックリしたら、唇を合わせたまま、瞼を落とした志貴が口元に弧を描いた。
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