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3 アメシスト
―――
私と志貴の始まりは、本当に些細な事だった。
入学して、四ヶ月が経った頃。
移動教室で彼等が集っていた廊下の前を通った私は、「っと!」その内の一人が急に後ろに下がった事で、肩と背中がぶつかってしまって。
バサッ!!!
持っていた教材を、廊下にぶちまけてしまった。
『わっ!!大丈夫?ごめんね!!』
『大丈夫です』
『お前、気を付けろよー!』
スカートを折って、その場にしゃがむ。
その時、私より先に手を伸ばして教材を拾ってくれたのが志貴だった。間近で見た顔が噂通り···、いや、それ以上に綺麗だったのを覚えてる。
睫毛は長いし、目尻が鋭い二重瞼は綺麗にラインが通っていて、黒瞳はそこまで大きく無くて。
髪の下で光るピアスは、何個もある。
肘までシャツを捲った袖から覗くのは、
私とは違う骨ばった男の人の腕で。
···でも、長身の体もしゃがめば小さくて。くだらない事を考えていた私も手を伸ばし、彼の手を縫うように、教科書を拾い胸元に纏めた。
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