3 アメシスト

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『はい』 と、最後の一冊を拾った彼が、片手で持った数冊のノートを私に差し出した。 『日高鞠ちゃん』 真っ直ぐ私を見る目。 やっぱり、睫毛が長い。 目尻が鋭いのに綺麗な二重の目は、一瞬でこの人の虜になってしまいそうに思えて、慌てて目を逸らした。 ···なんで、私の名前····· そう自惚れて、落とした視線の先。ノートに書かれていたのは、自分の字と自分の名前。···そっか。だから私の名前分かったんだ。 『ありがとうございます』 『鞠ちゃんって可愛い名前だね』 『···ぁ、ありがとうございます(?)』 『タメだから普通で良くない?』 『…?』 『タメ語』 『…ありがとう』 『どういたしまして』 志貴が女子と喋ってる!マジ卍!と意味の分からない言葉が周りから降ってくるけど、彼は少しだけ表情を柔らかくした。 『っ、』 ジッと見てくる志貴から逃げるように目を逸らして、私は立ち上がりスカートを叩く。
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