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『はい』
と、最後の一冊を拾った彼が、片手で持った数冊のノートを私に差し出した。
『日高鞠ちゃん』
真っ直ぐ私を見る目。
やっぱり、睫毛が長い。
目尻が鋭いのに綺麗な二重の目は、一瞬でこの人の虜になってしまいそうに思えて、慌てて目を逸らした。
···なんで、私の名前·····
そう自惚れて、落とした視線の先。ノートに書かれていたのは、自分の字と自分の名前。···そっか。だから私の名前分かったんだ。
『ありがとうございます』
『鞠ちゃんって可愛い名前だね』
『···ぁ、ありがとうございます(?)』
『タメだから普通で良くない?』
『…?』
『タメ語』
『…ありがとう』
『どういたしまして』
志貴が女子と喋ってる!マジ卍!と意味の分からない言葉が周りから降ってくるけど、彼は少しだけ表情を柔らかくした。
『っ、』
ジッと見てくる志貴から逃げるように目を逸らして、私は立ち上がりスカートを叩く。
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