犬、困惑する

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犬、困惑する

 ウォーレンは困惑した。 ――ど、どうしよう……。あのカレンが、こんな――、  ここは魔法で栄えたパパリッツィ帝国。  さんさんと午後の陽光が降り注ぎ、季節の花々が咲き乱れる王宮の中庭で、パパリッツィ帝国の皇帝ウォーレン三世ことウォーレン・ロイ・パパリッツィは、大いに困惑していた。  目の前にいるのは、さきほど中庭でたまたま出会ったカレン・ミディ・パパリッツィ。彼女はウォーレンの妻であり、目下彼の困惑の原因たる人物である。 ――こんなに、デレるなんて……ッ!  カレンはポーカーフェイスで、人前ではめったに笑顔を見せたことはない。そのためついた異名は「氷の皇后」。しかし、今のカレンは満面の笑みを浮かべてウォーレンの頭を撫でている。  一方で、珍しいカレンの笑顔を目の当たりにしているウォーレンは、驚きを言葉にすることができない。驚きすぎて言葉がでないわけではない。物理的に不可能なのだ。  なんたったって、ウォーレンは現在、手違いで真っ白でモフモフな大型犬の姿。口を開けば「ばう!」「くーん」「キャン!」しか出てこない。
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