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玄関ドアを閉めて、部屋に戻る。すると急に、恥ずかしさが込み上げてきた。バレちゃったから、私の「ひとめぼれ」が。
あっ……
この時、私は思い出していた。
このお米……以前書いた、雑誌のアンケート。その賞品が当たったんだ。
でも今は、そんなことはどうでも良かった。
いそいそとインターホンに記録されているはずの、モニター録画をチェックする。ふたたびキュンが、蘇ってきた。
「業務上の会話でいいから……もう一回、囁いて欲しいな、彼に……」
心がそう呟いた。
「あのぅ……ボクも囁いて欲しいな」
ん? 何!?
いま喋ったの、誰?
「ボク。インターホンだよ」
よく分からないが、喋っている。インターホンが……
「ボクなんかさ、愛を囁かれたこと……一度だってないんだから」
意外と饒舌なヤツだな……
インターホンが喋っているのは不思議だったが、なぜか不自然なことだとは思わなかった。
「でも、お帰りなさい、の一言を囁かれたとき、あったかい気持ちになったよ。
ボク、いつもその言葉を聴きたいんだ。
だからさぁ、頑張ろうぜ、その恋」
……………… 。
彼に「お帰りなさい」って、言うような状況……それって、私と彼と、この部屋で暮らすってこと? いゃん恥ずかしい、もう……
なんか、インターホンに勇気づけられちゃった。何だか分からないけど、確かにインターホンはそう言っていた。
そんな気がしていただけ。かも知れないが。
ー終ー
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