想いを手渡し

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 なにか心がときめくようなこと、ないかな……  秋の風が爽やかな休日のベランダで、ボンヤリと私はそんなことを考えていた。二杯目のコーヒー、お代わりしようかなんてことと一緒に。  手元の雑誌のページがパラパラと、風に(めく)られていた。そこに見えていたある記事。それがふと目に留まった。 『出会いは人の数だけあり、そこには色んなストーリーがあります。  たとえば気になるお店の店員さん、そして宅配便のお兄さんとか……』  あぁ……またいつもの恋愛特集だ。秋になると増えるのよね、この手の記事が。そう、必ずと言っていいほど組まれる、雑誌の特集記事。  だが、ものの見事に私は、その恋愛特集記事のターゲットになっていた。  でも、そもそも女のコって、いつでもキュンを求めてしまうもの。少し涼しくなってくる今頃は、特にそれが顕著になってくる。  月並みだけど、私もやっぱり人肌が恋しくて、どうしようもなくなっていた。別に私、恋愛体質って訳じゃないけれど……  手元の雑誌の恋愛特集は、あんまり面白いものじゃなかった。記事の字面(じづら)を眺めながら、頭の中は勝手にもっと欲深いものを求めていた。  そんなときだった。部屋のインターホンが鳴ったのは。
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