想いを手渡し

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 ピンポ~ン♪  インターホンのモニター画面に映る人影は、青いポロシャツを着ている。いつもの宅配便業者だった。 「お届けものです」 「あ…は〜い」  玄関ドアを開ける。ポロシャツのブルーが目に飛び込んできた。  あっ……  そこに居たのは、いつものオジサンじゃなかった。 「こんにちは」  ワォ!  目の前にいたのは、爽やかな男子。 「こ、こんにちは…」  私の声のトーンとテンションが、いつもより少し上がっているのが自分でも分かった。 「お届けものです、これ」  そう言いながら、爽やか男子が荷物を差し出す。 「ちょっと重いですけど」 「おもい?」  一瞬、言葉の意味が分からなくなる。耳で聞こえていた ”重い” という言葉が、頭の中で ”想い” に変換されていた。 「はい重いです……ちょっと、ね」  そっと私の両手に手渡された荷物。ちょっと、と言いながら、彼はまだ、両手で荷物を支えている。それが彼の優しさだと、私にはすぐに分かった。  キュン……  なんかゴメンなさい。仕事中なのに、勝手にキュンとしちゃって。  なんて言ったらいいのだろう、これ。急に恋が落ちてきた……そう、恋に落ちたじゃなくて、落ちてきたんだ、恋が。  こんな経験は初めてだった。  そして彼は少しずつ、荷物を持つ力を抜いて行く。それはそれは優しく、あくまでもユックリと。そして……  ズシリ。百パーセント伝わってきた。彼の想いが……あ、違う違う、荷物の重みが。 「重いでしょう?」 「あ、はい。何ですか、これ?」 「僕、配送だけの担当なので、荷物の中身までは…」 「あ、そうですよね。ごめんなさい、私…」 「あ、でもここに商品名が…」  そこには小さく内容物の品名が記されていた。ひとめぼれ、2kg入りと。 「お米、ですかね…」  嬉しそうに、彼が微笑んだ。そして「ありがとうございました」という言葉だけを残して、去って行った。  同じく私も「ありがとうございました」という言葉で、彼を見送っていた。  今度、いつ会えますか…… 口から出かかったその言葉。でもさすがにそれは、呑み込んでいた。
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