トライフル作り

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トライフル作り

(何か出来ないかしら……)  ――オリヴァー様のために、そしてエマ自身の為にも、笑顔を取り戻してあげたい。私に何か出来ることはないかしら……。  その時、静かに扉をノックしてメイドが入ってきた。飲み終わったティーカップやクッキーを片付け始める。  それを見ていたシャーロットはハッとひらめいた。 「オリヴァー様、私に良い考えがあります……!」 「え……っ?」  シャーロットは立ち上がり、オリヴァーの耳に口元を寄せた。内緒話をするような態勢である。 「――というのはどうでしょうか」 「なるほど」 「上手くいくかわかりませんが……」 「いや、やってみる価値はある。すごいぞ、シャーロット。さすがは俺の天使だ」 「はいっ――!」  二人は早速準備に取りかかった。 ☆~☆~☆~☆~☆ 「エマ。お帰りなさい」  学校から帰ってきたエマをシャーロットが呼び止めた。 「?」 「ささ、こちらへ」  そのまま厨房へと連れて行く。そこにはたくさんのお菓子作りの材料が揃っていた。純白のクリームや、卵色が鮮やかなスポンジや、軽い焼き色のクッキーや、様々なベリーなどである。側にオリヴァーもいた。 「――っ……!」  エマは驚いたように目を輝かせた。 「お誕生日おめでとう! さあ、一緒にトライフルを作りましょう」  トライフルとは〈何でも乗せちゃってオーケー〉という名前のケーキである。飾り付けが簡単で、しかも見栄えがよいので、子供でも作れる。一緒にトライフルを作り、エマに楽しんでもらう、というのがお菓子作りが得意なシャーロットが考えた作戦だった。 「さ、手を洗って」  こくこくと頷くと、エマは流し場に行く。その隣にオリヴァーが立った。どうやら彼も参加するらしい。 「え? オリヴァー様も?」 「いいだろう? 何事も経験だ」 「もちろん、いいですわよ!」  シャーロットはにっこり笑って、メイドに用意してもらった透明なガラスの器を出した。これに層になるように材料を敷き詰めていくのだ。 「どれから入れてもいいけれど、まずはクッキーにしましょうか」  と大小さまざまな形のクッキーを差し出す。シャーロットがあらかじめ焼いておいたものだ。 「粒がバラバラなんだな」 「ええ。こうするとトライフルに入れた時の食感が良くなるんです。〈もみもみクッキー〉というんですよ」 「〈もみもみクッキー〉?」 「はい。粉を百、バター五十、砂糖五十を混ぜて、袋に入れてもみもみします。それを天板にザーッと乗せて、百七十度のオーブンで十五分焼くんです。私、このクッキーが大好きなんです! 普通のクッキーは伸ばしているうちにバターが溶けて美味しくなくなるんですよ」 「へえ。そうなのか。味見してもいいかい?」 「もちろんです。さあ、エマも」  彼と少女は〈もみもみクッキー〉を一つ摘まみ、口に入れた。 「カリッとして甘い。美味しいな、エマ」  コクコク、とエマが同意する。シャーロットも嬉しくなった。 「さあ、続けましょう」
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